新潟県の藤屋段ボール株式会社は、第四北越フィナンシャルグループの支援のもと「サステナビリティ経営方針」を策定しました。本連載では、同社専務取締役、第四北越リサーチ&コンサルティングのSX専門家・江口取締役による対談を全4回にわたってお届けします。第1回は、支援がスタートした経緯やサステナビリティへの当初の受け止め、そして取り組みを通じて得られた「新たな気づき」について語り合いました。

支援開始の経緯とサステナビリティへの当初の受け止め
モデレーター今回、第四北越リサーチ&コンサルティングの江口さんのコンサルティングによるご支援がスタートしたのは今年の2月頃と伺いました。約4ヶ月にわたって深いやり取りがあったと思いますが、支援が始まる前に、最初に「サステナビリティ」に関するお話があったようですね。当時、御社ではサステナビリティに対してどのような考えをお持ちでしたか。また、その時にどのような受け止め方をされましたか。
藤サステナビリティに関しては、SDGsが有名になったこともあり一般的な言葉にはなってきていますが、当社でもいろいろな取り組みをホームページに掲載してはいたものの、結局それだけで終わっていて、そこからの発展があまりありませんでした。そうした中、2月に第四北越フィナンシャルグループの皆さんから、サステナビリティ経営方針を作りましょうというご提案をいただきました。特に「中小企業版のサステナビリティ経営方針」が他県で盛り上がっているという話には興味を持ちました。背景として、当社は上場企業との取引もあり、統合報告書のようなしっかりとした冊子をいただく機会があります。その都度目を通していましたが、非常によくまとめられた、壮大な内容の資料で、当社のような中小企業には少しハードルが高いなと感じていました。それを中小企業のレベルに落とし込んだ形でまとめる取り組みが始まっているということで、企業としての体裁を保つ、あるいは向上させていく上でも、一つしっかりしたものはあった方がいいと考えていましたので、面白いと感じたのが、ご提案いただいた時の率直な感覚でした。

モデレーターありがとうございます。これまでも環境への取り組みなどは進めてこられていたと思います。自社だけで今回のような方針策定や分析を行うことも可能だったのではないかと思いますが、外部の専門家と一緒に進めようと決められた理由があれば教えてください。
藤統合報告書というもの自体は読んだことがありましたが、作り方のノウハウがありませんでした。また中小企業版の統合報告書のフォーマットやまとめ方の知識もあまりなかったので、やはり外部の専門家と連携することで、自信を持って「これが当社のサステナビリティ経営方針です」と発信できると思いました。自社だけで作ると、どうしても素人が作ったものになってしまい、「これがサステナビリティ経営方針です」とはなかなか言いづらい部分があります。そこをサポートしていただけたのは良かったと思っています。
モデレーター第三者の目が入ることで、信用力や妥当性が担保される部分が大きかった、ということですね。先ほど、外部の統合報告書を見る機会が多いというお話がありましたが、実際にサステナビリティの領域で、取引先やお客様から具体的な要請が来るケースは、ここ数年増えているとも聞きます。御社でもそうした流れはありますか。
藤具体的に取り組み状況を開示してほしいと言われるケースはまだ稀で、上場企業の一部から簡単なヒアリングが来る程度です。詳しく掘り下げて聞かれるというよりは、ホームページにそうした情報を掲載していれば、そのURLを教えてほしいと言われる程度で、まだ表面的な段階です。県内の取引先については、今のところ深く追及されることはありませんが、これから増えていく可能性はあると考えています。
モデレーターこれから増えていく可能性があると考えると、先行して取り組んでおくメリットがあるかもしれませんね。今回の取り組みを進める中で、自社を振り返る機会も増えたのではないかと思います。新たな気づきがあれば教えてください。
藤今回、資料をまとめる前段として「事業インパクトの検証」を行っていただきました。その中で、ポジティブなインパクトとして「食品を消費市場に安定的かつ持続的に供給することで、地域経済の活性化をはじめ、人々の食生活の維持・改善に貢献し、経済社会の活性化につながっている」という評価をいただいたのですが、これが実際、新たな気づきでした。日々、私たちは「段ボールを作っている」という意識になりがちで、お客様の商品をお届けするところまでは意識が向いていましたが、その先の消費者の健康にまで貢献しているという視点はありませんでした。そこを第三者的に評価いただけたことは、一つの自信につながりました。
KEY MESSAGE「その先の消費者の健康にまで貢献しているという視点はありませんでした。」
江口氏が感じた藤屋段ボールの第一印象
モデレーター江口さんにもお伺いします。もともとは御社が県内の上場企業とも取引があり、そうしたつながりの中で「専務様は次世代の経営者として、5年10年ではなく20年30年先まで考えていく立場にあるので、サステナビリティについて一緒に考えていきたい」というお話があり、江口さんも面談に同席していたとのことですが、初めて御社にお伺いした際の印象や、この業界のサステナビリティについて感じたことがあれば教えてください。

江口様訪問する前に、まずホームページを拝見しました。SDGsのミッションのページを見て、急ごしらえでまとめたものではなく、以前からずっと取り組んでこられた内容を、きちんとまとめていらっしゃるという印象を受けました。サステナビリティについて先ほど「それだけで終わって」というお話もありましたが、客観的に見ると、しっかり取り組まれている企業だと感じました。具体的には、環境面では東北電力さんの「よりそう、再エネ電気」への切り替えや、工場・事務所全てのLED照明化、森林認証段ボールの取り組み、一方、社会面では経済産業省・日本健康会議「健康経営優良法人認定制度(中小規模法人部門)」の認定や聖籠町・胎内市との段ボールベッドの災害物資協定締結などに取り組んでおられます。訪問前の段階で、すでにそこまで開示されていることに、正直なところ「相性が良さそうだ」と感じながら伺いました。基本的にBtoBの企業の皆様の場合、自社がクライアントにどれだけ役立てるかという視点が重要になるので、機能面(設備や対応プロセスなど)を中心に打ち出しているホームページも多く、それはそれで全く問題ありません。ただ、藤屋段ボールさんの場合は、そこにSDGsや、以前からの理念のような、いわば情緒的な部分も掲載されていて、BtoBの会社でありながら「付き合う価値があるか」「ファンになれるか」といった発信をされているホームページだという印象を持ちました。BtoBでそこまでやられている企業はあまり多く見かけません。現在、上場企業を中心にサステナビリティ情報の開示要請は強まっていて、「取り組むだけでなく、ちゃんと開示しなさい」という流れになっています。その背景には、開示した情報を見た外部の方からフィードバックをもらい、それをもとに改善し、また開示していくという循環の考え方があるのではないかと個人的には思っています。単に世界的な流れだから開示した方がいいというだけでなく、開示してフィードバックを受け、改善し、また開示する、というサイクルの中で、サステナブルな企業が社会全体で増えていく、というのがサステナビリティの根底にある考え方ではないかと思います。すでに開示に取り組んでおられる御社の場合、社内外にサステナビリティ活動の実績をさらにアピールするお手伝いができるのではと感じながら伺いました。実際、訪問時には、専務様から自社の取り組みに関するプレゼンをいただいたり、工場を見学させていただいたりする中で、サステナビリティの意識や行動が現場にしっかり根付いていると感じました。ただ、いろいろな活動をされている分、そろそろまとめて発信する時期に来ているのではないかとも感じ、サステナビリティ経営方針を策定するにはちょうど良いタイミングだと思いました。

支援を受けるまでの迷いや不安
モデレーター肌感覚でこうした取り組みが必要だと感じている経営者の方は多くいらっしゃいますが、実際にやると決断される方は少ないのが実情のようです。ご提案を受けてから実施を決めるまで、多少お時間があったかと思いますが、当時どのような気持ちだったか教えてください。
藤第四北越フィナンシャルグループとは、日頃から情報を開示させていただいたり、情報交換をさせていただいたりする関係にあったので、特に不安はなく、むしろ相談しやすい関係でした。支援自体への不安はなかったのですが、上場企業の統合報告書を見ると内容が非常に盛りだくさんで、当社でどれだけ書ける内容があるだろうかという不安はありました。実際にいろいろと評価していただくと、森林認証や健康経営、再生可能エネルギー電力の使用など、「再エネ電力を使ってCO2排出量が実質ゼロになっている企業はあまり多くない」といったお話もいただき、当たり前のように取り組んでいたことを、もっとPRすべきだったと改めて感じました。

モデレーター江口さんにお聞きします。サステナビリティに取り組んでいくにあたって、経営者がつまずきやすい点があれば教えてください。
江口様つまずく前の段階として、まずサステナビリティは社会貢献や環境のためだけのもの、という意識を一旦取り払うことが重要です。将来を見据えた「先手の経営」であり、そのための方針を作るものだということを理解した上で進めることが大切です。しかも、将来こうなるだろうという予測だけでなく、「自分たちは将来こういう会社にしたい」という意思を持ち、それに向けてどうすべきかを考えることが重要だと思います。先を意識しながら作らないと、現状の問題を改善するための対策集のようなものになってしまうので、その点は気をつけた方がいいと思います。その上で、「今後こうしていきたい」と思っていた施策をサステナビリティ経営方針策定のタイミングに合わせて入れ込んでいくことも良いと思います。今回も、専務様が「計画的な人材育成」の一環として、年間の人材育成計画の策定を検討しており、ちょうど良いタイミングであったため、KPIの1つとして組み込みました。
取材場所紹介
わたご酒店さんの新店舗somaで取材をさせていただきました。

somaとは、漢字で、杣(そま)と書きます。杣(そま)は、神社仏閣などの建材を、100年以上前から育てる人目に触れない山のことです。
人知れず、未来を見据えて静かに受け継がれてきた里山。
ここ新潟島には、山も森も、田んぼも畑もありませんが、日本一の大河「信濃川」で里山とつながっています。
さらに日本で最長の信濃川を名前の由来にもつ信濃町は、日本で最も文化が集積される場所なのではないかと考えています。
私たちが最も力を入れるのが、日本酒。日本酒は、まさに日本の自然と里山の営みによって生まれる産物です。
私たちは、このまちでそんな里山で繰り広げられる営みを、皆様にお伝えできれば幸いです。
また今後は里山へ誘う企画も考案中です!
